マーケットニュートラルの本質は、「ベータ(β)リスクを極力排除してアルファ(α)を取りに行く戦略である
と既に述べた。これはペアトレードについても同様のことが言える。※参考【ペアトレードの本質1.)。

今回は、1.のαの部分、すなわち「価格差」について補足しておきたい。
 

【α値の算出方法と組み合わせの自由度】                                          

ペアトレードを行うにあたり、利益の源泉そのものである「価格差」、つまりα値をどのように算出するべきなのだろうか?

価格差を算出するには、大きくわけて以下2つの方法が考えられる。

{ B銘柄の株価 × B銘柄の株数) A銘柄の株価 × A銘柄の株数) }

{(過去n日間の株価 n日前の株価) ÷ n日前の株価 × 100 [] }

まず、①について。

{ B銘柄の株価 × B銘柄の株数) A銘柄の株価 × A銘柄の株数) }

この算出方法は、「絶対値」の計算方式でB銘柄(脇銘柄)とA銘柄(軸銘柄)のスプレッドを算出する方法である。使い方としては、過去n日間の平均乖離値が100円で最大乖離幅が120円だったとした場合、120円に開いた段階でエントリー(両建て)を行い、100円に収斂したらエグジット(手仕舞い)する。つまり、12010020円となり、差分の20円が期待利益となる。

なお、比率換算すると、①の計算式は、

①’ { B銘柄の株価 × B銘柄の株数) ÷ A銘柄の株価 × A銘柄の株数) }

のように変換できる。

上記のケースの場合、120÷1001.2%となり、1.2%の期待収益率となる。

次に、②について。

{(過去n日間の株価 n日前の株価) ÷ n日前の株価 × 100 [] }

これは「100分率法」という「相対値」の算出方法である。

まず、投資金額が少ない投資家の方であれば①の算出方法でも十分であるが、目安としては運用額が3,000万円を超えるような資金量の多い投資家であれば②の方法を用いる必要があると考えられる。

その理由は、①の方法で算出すると銘柄ペアの組み合わせ候補が少なくなり、結果としてポートフォリオを設計する際に、「組み合わせの自由度がかなり限定されてしまう」ためである。なお、この場合、任意のn2401年)で計算するのが一般的とされている。

次に、②の算出方法の有意性について説明する。①の算出方法は、単純に「脇銘柄」と「軸銘柄」の差分をα値と定義した「絶対値」であるが、②の算出方法は、過去n日前の株価と現在の株価の「相対値」となる。この場合、②の算出方法を用いることにより、前回説明したβ値のニュートラル化の問題を補完するための代替案になると考えられる。※参考【相関係数の弱点とβ値の重要性

その理由は、βリスクを完全に排除することができない実際の取引現場では、「株価の高い銘柄が低い銘柄に比べて、「相対的」にβ値が大きくなる」と考えられるため、①の算出方法だと、割高銘柄(つまりショート銘柄)のβ値の影響を強く受けてしまい、ショート銘柄が上昇した場合、ロング銘柄のβ値の連動比率が追い付けずに、取引がうまく機能しなくなるためである。そのため、実際の取引では、βリスクを完全に排除しきれないため、割高・割安の概念を代替策とする、もしくは併用することにより、ロング銘柄とショート銘柄の組み合わせを行ったほうが、①の算出方法に対して優位性があると考えられる。

当ブログでは、一般的に用いられている①の説明をメインとした。
 

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