理解し合うためにはお互い似ていなくてはならない。
しかし、愛し合うためには少しばかり違っていなくてはならない”

ポールジェラルディ(1885  1960 フランスの詩人、劇作家)


【ペアトレードの本質】

1. 「銘柄」ではなく、「価格差」を取引対象とする

ペアトレードとは、『同じような「値動き」をする、2つの異なる「商品(「銘柄」)」の「価格差(スプレッド)」を利用して利ザヤ(マージン)を稼ぐ取引』のことをいう。

同じような「値動き」をする2つの異なる「銘柄」のうち、いずれか一方の企業に、特に個別のニュースもなく両銘柄間の「価格差」が拡大した場合、割安な「銘柄A」を買い持ち(ロング)し、割高な「銘柄B」を空売り(ショート)する。時間の経過とともに割安な「銘柄A」は上昇、割高な「銘柄B」は下落し、「価格差」はやがて均衡点に向かって収斂していくはずである。

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出典:「マネックス証券HP(信用取引)

この時、買い持ちした「銘柄A」を売却、空売りした「銘柄B」を買戻しすれば、「価格差」(『取引開始時点の「銘柄B」-「銘柄A」の価格差』-『取引終了時点の「銘柄B」-「銘柄A」の価格差』)が利益となる。

ただし、2つの「商品」は、『①「値動き」に連動性があるものの、②「値段」と「値動き」が全く同じであってはならない』。これは、一見すると矛盾しているようだが、2つの「銘柄」の「価格差」が利益となるため、①「値段」が全く同じだと、そもそも「価格差」が発生しないし、②「値動き」が全く同じだと「価格差」が拡大も縮小もしないことになる。そのため、一時的に「価格差」が拡大し、やがて均衡点に向かって収斂していくような2つの「銘柄」を組み合わせて両建て取引する必要がある(※あくまでも理論上のイメージ、実際にそんなに都合のよい銘柄ペアがあれば今頃はみんな大金持ちになっているはずだ)。

ペアトレードの本質は『「価格差」が取引対象であって、「銘柄」そのものではない』ということ。

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具体例として、高い連動性を持つ
A株とB株があるとする(これを高い相関関係にあると言う)。A株が300円、A株が400円と仮定する。現時点で、両銘柄の価格差(サヤ幅)は100円。この時、A株を買い付け(ロング)すると同時にB株を空売り(ショート)したとする、

上図の左をご覧いただきたい、時間の経過とともに相場全体が下落し、A株が下落し250円になり、B株も下落し300円になったとする。この時、A株は-50円の損失となり、B株は100円の利益となる。この両者の合成ポジションは50円の利益となる。

もちろんすべての組み合わせ銘柄が利益を上げるわけではなく上図の右のように、買い付けたA株が350円になり、空売りしたB株が500円になれば、合成ポジションは50円の損失となる[1]

このように、ロングする銘柄(割安株)とショートする銘柄(割高株)の判断さえ間違えなければ、株式市場の動向にはあまり左右されず、リターンを得ることが期待できる。

[1] 手数料は考慮しない。
 

2. 連動性を利用してリスクをヘッジする

2つの異なる「銘柄」の間に、「連動性」(相関関係)があるならば、その性質を利用して市場リスクを軽減させる効果』が期待できる。両銘柄に「連動性」があれば、「銘柄A」が上がると「銘柄B」も連動して上がり、「銘柄A」が下がると「銘柄B」も連動して下がるはずである。そのため、経済状況などの「外部要因」による変動リスクを軽減させることができる。

また、それとは反対に、「銘柄A」と「銘柄B」の連動性が崩れた場合、買い建てした「銘柄A」が下がり、空売りした「銘柄B」が上がるといったことが起こり得る。ここで言うリスクヘッジはそもそも『「銘柄A」と「銘柄B」の連動性』を担保としており、連動性が崩れた場合は、この取引の前提が成り立たなくなるため、取引を中止・中断する。

ペアトレードの本質は「銘柄の連動性を利用したヘッジ取引である」ということ。

※なお、価格差の収斂方向とは逆に、価格差が乖離して行く方向に仕掛ける戦略もある。

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出典:「マネックス証券HP(信用取引)

3. 最小単位のポートフォリオ投資である

投資の世界には、「卵は1つのカゴに盛るな」という有名な格言があるが、これは、「いくつかの卵を1つのカゴに入れておくと、ひっくり返ったときに全部の卵が割れてしまうので注意しなさい」ということの教え。ペアトレードは、最低2銘柄の「買い建て」と「売り建て」を同時に行う取引のため、最小単位の「ポートフォリオ投資」となる。さらに、最小単位の「ポートフォリオ」を複数に「分散」して投資することによって、リスクを軽減する効果が期待できる。

ペアトレードの本質は「最小単位のポートフォリオ投資である」ということ。

4. レンジ相場の取引である 

ペアトレードは、相場環境が上昇局面・下落局面にかかわらず、「一方の銘柄の利益」と、「他方の銘柄の損失」が損益を相殺し合うことによって、相場の動向に左右されることなく「価格差」だけに注目する取引である。ペアトレードは「連動性」を前提としているため、確率論から見ると、「価格差」の拡大幅がある程度は推測できると考えられる。そのため、人工的な「レンジ相場(ボックス相場)」を前提として取引を行うこととなる。なお、レンジを抜けたものは、この取引の前提が成り立たなくなるため、取引を中止・中断する。

ペアトレードの本質は「レンジ相場の取引である」ということ。
 

【ペアトレードの実践】
 

1. 同じくらいの大きさの「銘柄」を組み合わせる

同じ「業種」で同じくらいの「株価」「規模」「業績」の銘柄ペアは、基本的に同じくらいの比率(%)で「株価」が連動する傾向にある。すなわち、レンジ相場はもちろんのこと、相場が上昇トレンドでも下降トレンドでも、ロング銘柄とショート銘柄の変動が相殺し合うことで、マーケットの変動リスクに対してヘッジの役割を果たすと考えられる。

以上の理由から、「同じくらいの大きさの「銘柄」を組み合わせることが有効」と考えられる。

2. 同じくらいの連動性を持つ「銘柄」を組み合わせる

同じ「業種」で同じくらいの「株価」「規模」「業績」の銘柄ペアは、基本的に同じくらいの比率(%)で「株価」が連動する傾向にある。すなわち、「価格差」が一定の範囲内で上下動をすると考えられる。このように、連動性の高い銘柄ペアであっても、どちらか一方に個別のニュースが無い場合でも値動きが一時的に乖離してしまうことがある。

以上の理由から、「同じくらいの連動性を持つ「銘柄」を組み合わせることが有効」と考えられる。

3. 「価格差」が拡大したら取引を開始し、縮小したら取引を終了する

1.2.で述べたような銘柄をペアにすることにより、「価格差(サヤ幅)」だけを見て取引することが可能となる。「価格差」の取引は一定の上下動を繰り返す「レンジ相場」を人工的に作り上げることと同じ意味合いを持つ。そのため、価格の最大幅をある程度推測することが可能となるため、逆張り投資が有効と考えられる。

以上の理由から、『「価格差が拡大したら取引を開始し、縮小したら取引を終了する」といった逆張りの投資戦略が有効』と考えられる。


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