ペアトレードブログ

難しいことをわかりやすく。次に必要としてくれる誰かのために。

ペアトレードブログ


pairtrade

このブログはマーケットニュートラル投資の古典的手法であるペアトレードについて説明したものです。

【ペアトレード関連】

ペアトレードの本質

ペアトレードのメリットとデメリット

銘柄選択の基準:ステップ1
銘柄選択の基準:ステップ1+α

銘柄選択の基準:ステップ2-A【単純比較型相対価値分析】
銘柄選択の基準:ステップ2-A【単純比較型相対価値分析】+α
or
銘柄選択の基準:ステップ2-B【指数連動型相対価値分析】
銘柄選択の基準:ステップ2-B【指数連動型相対価値分析】+α

銘柄選択の基準:ステップ3
銘柄選択の基準:ステップ3+α

銘柄選択の基準:ステップ4
銘柄選択の基準:ステップ4+α

※補足事項

FX(外国為替)を使ったサヤ取り

一物一価と二物二価

相関係数の弱点とβ値の重要性

α値の算出方法と組み合わせの自由度

ポートフォリオの最適化

ペアトレードの改善点

※関連業者一覧

関連業者一覧 

【統計関連】


統計学基礎①

統計学基礎②

【参考文献一覧】

参考文献一覧 

 

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【補足】ペアトレードの改善点

このブログでは、基本的な統計知識を使ってヘッジ取引の入門レベルの内容をひと通り説明してみた。理論としては間違っていたことも書いてしまったかもしれないが、「依存し過ぎることの危険性」を誰かが伝えないといけないと思ったので、批判を覚悟でいろいろ書いてみることにした。
 

【要点のまとめ】

ペアトレードの要点について、【理論】【現実】【改善策】を以下にまとめておく。


1.
ペアトレードは裁定取引(アービトラージ)ではない

【理論】

ペアトレードは異なる2つ以上の銘柄ペアを、一方をロング(買い建て)、他方をショート(売り建て:空売り)し、同時に組み合わせて売買する。そのため、ロングまたはショートした双方の利益と損失を相殺し、相場変動によるリスクをヘッジする取引である(すなわち、一方の銘柄に対し、ペアとなる銘柄はヘッジ(保険)機能を果たす)。

そのため、株式市場全体がある方向に動くマーケットリスクを、ヘッジ機能を用いて中立的(マーケットニュートラル)にし、いかなる相場状況であっても絶対的にプラスリターンを目指す投資戦略である。ペアトレードは統計的裁定取引に分類される。

【現実】

両建てしたポジションは、極論を言えばロング方向とショート方向にそれぞれ片張り投資をしているのと大して変わらない。裁定取引は、一物一価の性質上、市場の非効率性を「α」とし、マーケット変動による「β」を完全に排除した合理性のある投資方法である。

その一方で、ペアトレードはニ物二価の性質上、価格差の拡大・収斂はあくまでも確率・統計によって「α」の方向性の分析をしているにすぎない。さらに、βリスクを完全に排除できないため、100%合理性のある投資方法とは言えない。

【改善策】

比較的高い相関性を担保とした取引に過ぎないため、2つの異なる銘柄の価格差は平均値に向かって必ずしも収斂する保証はない。価格差が一定水準に拡大した場合は、ただちに該当する銘柄ペアの取引を中断するべきである。

確率論による取引手法である以上、「銘柄分散」と「試行回数を増やす」ことで、ポートフォリオ全体でトータルのプラスリターンを狙うくらいしか改善策は存在しないと考える。

ペアトレード(ストラドル)の「α」と裁定取引(アービトラージ)の「α」の本質が異なる点に注意のこと。 


2.
ペアトレードはβリスクを完全に排除できない投資方法である

【理論】

できるだけ標準偏差の同じくらいの銘柄を組み合わせる。そうでなければ、βリスクを排除しきれず、結果としてボラティリティの大きい銘柄の片張り投資と変わらなくなってしまう。

【現実】

αを追及するペアトレードも、結局のところβをニュートラル化できないため、マーケットの変動リスク(βリスク)を完全に排除することはできない(【相関係数の弱点とβ値の重要性】参照)。

【改善策】

銘柄をできるだけ分散し、ポートフォリオ全体でβ値を極力ニュートラル化することが改善策になると考える。


3.  
価格差の分析を行うときは、複数の指標を組み合わせること。

【理論】

確率・統計に基づいたテクニカル分析は、マーケット分析を行う際に非常に有力なツールとなる。

【現実】

確率・統計によって算出された数値そのものは正しいが、その数値は必ずしも実践では正しくないことが多い。

【改善策】

テクニカル分析は万能なツールではない。たしかに、確率・統計はマーケットアプローチの1つの手段となり得るが、依存し、過信すべきではない。

ベキ分布にしたがうとされている現実のマーケットにおいて、私たちは正規分布を前提としてマーケット分析を行っている点を心に留めておくべきである(参考:「理論と現実の誤差について考える~正規分布とベキ分布~」)

テクニカル分析を行う投資家にとっては、指標を単体で使うことに効果がないことは既に承知済だと思うが、自らが妥協できる条件が最低2つ以上揃うまでは安易にエントリーすべきではないと考える。

どんな条件で取引するにせよ、結果については、「マーケットは常に正しい、間違っているのは投資家自身である」ということを忘れずに。


【確率論は「数」の勝負である】

なんだかエラそうにこのブログを書いてきたが、私も結局のところ100%の確率で収益を上げられる天才トレーダーではないので、頭に汗をかきながら端末を叩いてポジションをあれこれ悩みながら設計している。

私が少しでも銘柄の分散数を増やしたほうがいいと言ったのは、確率論は「数」の勝負であるという経験則からである。つまり「トータルで損益がプラスになればOK」という発想があるからだ。そのため、勝率はあまり気にしないことにしている。

11本の「木」には必ず何らかのクセがあって、どの銘柄ペアとどの銘柄ペアを組み合わせればお互いの弱点を補完しながら収益化できるのか。さらには、どの銘柄ペアグループとどの銘柄ペアグループを組み合わせれば収益化できるのか、日々の業務の中で仮説と検証を繰り返している。

「木を見て森を見ず」という言葉があるように、「木(個々の銘柄ペア)」の損益はあまり気にしない。うまく行かなければ事務的にロスカットする、ただそれだけのこと。このあたりはプログラムが自動的に執行してくれる[1]

それよりも「森(ポートフォリオ全体)」を見てプラスになっていれば、「自分の仮説は正しかった」と判断している。

また、トレードの際に心がけていることが2つある。

1つは、「30」銘柄くらいに分散し、設定したアルゴリズムで運用テストを行うようにしている。

統計上、「正規分布である」と仮定するためには、最低限「30」の標本データが必要と考えられる。この「30」という数字は、統計学では「マジックナンバー」と呼ばれており、様々な結果を導き出すための非常に重要(最低限必要)な数字となっている(「マーケットは正規分布ではない」と書いたものの、結局このような分析手法以外に妥協できるアプローチ方法が無いのだから仕方ないではないか)。

結局、確率論の勝負となるため、「銘柄の分散数」と「試行回数」を増やしていくしかないのだ。

銘柄ペアの1セットや1回の試行回数が「点」とするならば、分散する銘柄ペア数や運用テストの試行回数は「点+点+点+点+点…」のようになり、点をつないで行くと面になる。この面を作るために私は「30」という数字を意識している。「木」ではなく、「森」を見るのと同じように、ポートフォリオの本質は「点」だったものを「面」として捉えるための概念だと考えている(さらにグローバル規模に発展させると「面」から「立方体」に変わる」)。

line
→ face→ cube
出典:「組織学習経営とは 

30銘柄に分散する投資金額がない場合であっても、銘柄ペアを分散し、1つ銘柄の損失をポートフォリオ全体でカバーできるようなポジション設計をイメージしてみてほしい。

1度大きな損失を出してしまうと、元の状態に回復させるのは本当に大変な作業であることは、この記事を読んでいるみなさんもよくご存じのことだろう。

ゆえに、『「増やす」よりも「減らさないように」投資するという考え方そのもの』が、結局のところ、ゲームを長く続けるコツだと思っている(参考:「集中と分散」)。難しい技術は必要ない。これは私の経験則である。

もう1つは、投資する銘柄ペアは等価金額に近いペア同士を組み合わせている。さらに重複する銘柄はどちらかを必ず除外するようにしている。

投資する銘柄ペアを等価金額に合わせる理由は、特定の銘柄ペアに偏りがありすぎると、特定の銘柄ペアの比率が大きすぎて、急激な損失が発生した場合、ポートフォリオ全体でカバーしきれないためである。

重複する銘柄を除外する理由は上記と同じく、突発的に生じる個別銘柄特有のリスクを一定水準に保ち、ニュートラル化させるためである。上記と同様、特定の銘柄ペアに偏りがありすぎると、特定の銘柄ペアの損失比率が大きすぎて、ポートフォリオ全体でカバーしきれないためである。

確率・統計上、銘柄を分散し、試行回数を増やせば、勝率は大数の法則にしたがい、理論上は50%に近くなって行くはずである。

そのため、勝率は50%程度でかまわない、それよりも確実に『「利益」-「損失」=「+」』となっていることのほうがよほど大事だと考えている[2]

ペアトレードが「初心者でも簡単に儲かる」、「アクティブ投資よりもリスクが少ない」といったイメージをお持ちの方に、私の本音を申し上げておきたい。

ペアトレードがシングルトレードと比較して安全な投資方法であるというのは正直なところ「正解」でもあり「不正解」でもあると思う。

たしかに取引対象の本質は違う、しかしリスクマネジメントの本質は同じだと思う。「α」を追及する両建て投資も「β」を追及する片張り投資も、十分な銘柄分散や資金管理ができていなければ、結局のところ、どちらもリスクは大して変わらないと考えている。

これは理論という建て前を取り除いた私の本音である。ウソだと思ったら実際に投資してみてほしい、私の言っていることがおわかりいただけると思う。

[1] 私の知るかぎり、ロスカットについては女性トレーダーのほうがドライに実行できる傾向があるように思う。その一方、男性トレーダーのほうが未練たらしく、振られてもなかなか諦めきれずに銘柄のストーカーになってしまう傾向があるように思う。たしかに女性は失恋しても、数日経つと新しい恋人を見つけて、今までの恋人のことはさっさと過去の経験に切り替えてしまう不思議な才能があるように思う。

ロスカットが事務的に実行できるかできないか、さらには自分が決めたルールをしっかり守れるかどうか。これが初心者と中級者の1つの分岐点だと思う。難しい技術を習得するよりも、実は簡単なところにコツがあるのではないだろうか。

 [2] 勝率50%を一定期間キープできるトレーダーは正直言って極めて優秀である。私は実際のところ、かなり勝率は低い。

理由は、これはダメだなと思った銘柄ペアはさっさとロスカットして他の銘柄ペアに組み換えてしまうため、負け数は必然的に多くなるからだ(ゆえに勝率は低くなる)。逆に、勝率が高すぎるロジックを検証してみると、ロスカット基準が緩すぎる、あるいは非常に曖昧なためドローダウンがかなり大きい組み方をしている傾向が強いことがわかる。

私は個人的には、負けを素直に認める勝率の低いロジックのほうを好んで使っている(損小利大は投資の基本である、うまく行っているペアで利益を伸ばせばいいのだから)。

もう一度言うが、勝率はあまり気にする必要はないだろう、投資のプロでも勝率を強調している人間がいれば、それはたぶん。これ以上は書かないが...

※なお、ペアトレードのようなαを追及する取引において勝率とは、ペアを1セットとしてロスカットを執行するため、2つの銘柄を同時に決済すると定義している。
 

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【補足】ポートフォリオの最適化


マーケットは絶えず変化し続け、常に一定の形状にはならない。私たちトレーダーは、現在のマーケットの状況に応じて組み込むポジション比率などは柔軟に組み変えていくべきだろう。

これはサーフィンのようなもので、同じ形の波は二度と来ないけれども、波の乗り方をきちんと身に付けることができれば、どんな形の波が来ても応用を効かせて乗ることができるようになることと本質は同じことである。

世間一般の認識として、「ペアトレードなどの両建売買は、マーケットに対してニュートラルポジションを組むため、安心・安全な投資方法である」と言われている。

たしかに、これは理論的には正しいかもしれないが、実践ではこの考え方はたぶん必ずしも正解ではないだろう(詳しくは、【相関係数の弱点とβ値の重要性】参照のこと)。ここまでの銘柄選択の項目ではそのようなニュアンスで書いてきたが、あくまでも純粋理論であることに注意してほしい。

13_640x444

上の図は最小二乗法による回帰直線からの誤差dを表したものである。回帰直線(y=axb)は全ての標本データの平均を通るため、回帰直線からの誤差dが大きくなるほどポートフォリオの最適化がなされていないことを意味し、反対に誤差dが小さくなるほどポートフォリオの最適化がなされていることを意味している。

銘柄ペアを複数に分散させることにより、個々のペア銘柄が持つ互いの誤差dを相殺し合うため、合成された誤差dは回帰直線に近づき、ポートフォリオの最適化を実現することが可能となる。すなわち、調整後の合成誤差dは決定係数(r2)の値が大きいほど最適化がなされることになるため、1.0が最も理想的な最適化となる。

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もっとも、これは理論上の話(オーバーフィッティング)である。自然科学の世界とは異なり、社会科学の世界では利害関係等のバイアスがかかるため実現不可能である。

05 8

誤差r2調整後        誤差r2調整後
↓            
4   9
合成誤差r2                         合成誤差r2

以上により、ポートフォリオの最適化を行うメリットは、互いの誤差dを相殺し、マーケットの変動リスクを制御しつつも、利益を実現できる点にあるといえるだろう。

*****
 

ここでサッカーを例にポートフォリオの本質を考えてみたい。

493px-Soccer_field_-_empty
出典:
WikipediaMidfielder

サッカーは、「フォワード(FW:攻撃)」・「ミッドフィールダー(MF:攻撃・防御)」・「ディフェンス(DF:防御)」と「ゴールキーパー(GK:防御)」の属性を持つプレーヤーの合計11人同士で競い合うゲームである。

このプレーヤーの属性もそれぞれの果たす役割分担がしっかりしており、ポートフォリオの役割を果たしていることがおわかりいただけると思う。

サッカーは、―他のゲームもそうであるが―、対戦する相手チームによって戦略の組み方が異なっている。たとえば、攻撃力が強いチームと対戦する時は保守的に守りを重点的に固めながら、相手のスキを伺いつつ、カウンター攻撃を狙う戦略を採ることになる(例:プレーヤー全体のベンチマーク線=基準線の位置はハーフラインよりも相対的に自分チームのゴール側に近くする)。

5-3-2
出典:「
CYPF

これとは逆に、攻撃力が弱いチームと対戦する時には守りを固めながらも、積極的に攻撃を仕掛けて行く戦略を採ることになる(例:プレーヤー全体のベンチマーク線=基準線の位置はハーフラインよりも相対的に相手チームのゴール側に近くする)。

4-3-3
出典:「CYPF

もっとも、11人全員で一斉に相手側ゴールに向かって攻撃を仕掛けてもいいのだが、相手にボールを奪われてカウンター攻撃(迎撃)を喰らってしまうと、ゴールを守るプレイヤーが誰もいなくなってしまう。

個人的には観戦してみたい気もするが、ポートフォリオの考え方を完全に無視した采配であり、偶然の発生確率に依存したハイリスクな賭けとなり、合理的な選択とは言えないだろう。

以上のことから、ペアトレードにおけるポートフォリオは、なるべく「ベンチマーク=平均値」に近似するように設計するのが最も理想的である、と考えられる。

※ペアトレードは基本的に11の銘柄ペアを組み合わせた戦略であるのに対して、ロング・ショート戦略はマーケットの強弱に合わせてロングとショートの比率を調整するため、より裁量トレードに近い戦略と言える。

サッカーの「フォワード」と「ディフェンス」、ペアトレードの「ロングポジション」と「ショートポジション」。一見すると、姿・形は違うけれども、ポートフォリオの観点から見れば、どの組み合わせも自分の弱点を相互に補完し合っていることがおわかりいただけると思う。
 

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【補足】α値の算出方法と組み合わせの自由度


マーケットニュートラルの本質は、「ベータ(β)リスクを極力排除してアルファ(α)を取りに行く戦略である
と既に述べた。これはペアトレードについても同様のことが言える。※参考【ペアトレードの本質1.)。

今回は、1.のαの部分、すなわち「価格差」について補足しておきたい。
 

【α値の算出方法と組み合わせの自由度】                                          

ペアトレードを行うにあたり、利益の源泉そのものである「価格差」、つまりα値をどのように算出するべきなのだろうか?

価格差を算出するには、大きくわけて以下2つの方法が考えられる。

{ B銘柄の株価 × B銘柄の株数) A銘柄の株価 × A銘柄の株数) }

{(過去n日間の株価 n日前の株価) ÷ n日前の株価 × 100 [] }

まず、①について。

{ B銘柄の株価 × B銘柄の株数) A銘柄の株価 × A銘柄の株数) }

この算出方法は、「絶対値」の計算方式でB銘柄(脇銘柄)とA銘柄(軸銘柄)のスプレッドを算出する方法である。使い方としては、過去n日間の平均乖離値が100円で最大乖離幅が120円だったとした場合、120円に開いた段階でエントリー(両建て)を行い、100円に収斂したらエグジット(手仕舞い)する。つまり、12010020円となり、差分の20円が期待利益となる。

なお、比率換算すると、①の計算式は、

①’ { B銘柄の株価 × B銘柄の株数) ÷ A銘柄の株価 × A銘柄の株数) }

のように変換できる。

上記のケースの場合、120÷1001.2%となり、1.2%の期待収益率となる。

次に、②について。

{(過去n日間の株価 n日前の株価) ÷ n日前の株価 × 100 [] }

これは「100分率法」という「相対値」の算出方法である。

まず、投資金額が少ない投資家の方であれば①の算出方法でも十分であるが、目安としては運用額が3,000万円を超えるような資金量の多い投資家であれば②の方法を用いる必要があると考えられる。

その理由は、①の方法で算出すると銘柄ペアの組み合わせ候補が少なくなり、結果としてポートフォリオを設計する際に、「組み合わせの自由度がかなり限定されてしまう」ためである。なお、この場合、任意のn2401年)で計算するのが一般的とされている。

次に、②の算出方法の有意性について説明する。①の算出方法は、単純に「脇銘柄」と「軸銘柄」の差分をα値と定義した「絶対値」であるが、②の算出方法は、過去n日前の株価と現在の株価の「相対値」となる。この場合、②の算出方法を用いることにより、前回説明したβ値のニュートラル化の問題を補完するための代替案になると考えられる。※参考【相関係数の弱点とβ値の重要性

その理由は、βリスクを完全に排除することができない実際の取引現場では、「株価の高い銘柄が低い銘柄に比べて、「相対的」にβ値が大きくなる」と考えられるため、①の算出方法だと、割高銘柄(つまりショート銘柄)のβ値の影響を強く受けてしまい、ショート銘柄が上昇した場合、ロング銘柄のβ値の連動比率が追い付けずに、取引がうまく機能しなくなるためである。そのため、実際の取引では、βリスクを完全に排除しきれないため、割高・割安の概念を代替策とする、もしくは併用することにより、ロング銘柄とショート銘柄の組み合わせを行ったほうが、①の算出方法に対して優位性があると考えられる。

当ブログでは、一般的に用いられている①の説明をメインとした。
 

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【補足】相関係数の弱点とβ値の重要性


ペアトレードにかぎらず、投資戦略を考えるとき、それぞれのスクリーニング項目には必ず弱点が存在する。
そのため、スクリーニング項目を増やし、「弱点を相互に補完」していく必要があると考えられる

もっとも、純粋理論の世界であれば完璧な銘柄ペアを生成できるかもしれないが、スクリーニング項目を厳密に増やし過ぎると、今度は候補となる対象銘柄そのものが減ってしまい、分散投資ができなくなるというデメリットが生じてしまう。このあたりのバランス感覚は投資家にとって非常に重要であるといえる。

 

【相関係数の弱点とβ値の重要性】

以前、【銘柄選択の基準:ステップ3】の説明の中で、「相関係数よりもβ値のほうが大事」と書いたが、この点を以下に補足したい。

ペアトレードをする上で、「相関係数」の概念は最重要ファクターの1つであることは間違いないだろう。しかしながら、「相関係数」だけではやはり不十分である。

相関係数は本来、異なる変量xyの間に生じる相関(連動性)の度合いを測定するための統計分析手法であり、そのため、変量xyを均一化して比較する作業が必要となる。

06_640x511※参考【相関分析と相関係数

上の図は、異なる変量xyのデータを均一化して比較するために、平均からのズレ(偏差)を計算して、それぞれの合計が0の値になるようにデータの加工を施したイメージである(【偏差】参照)。

次に、バラツキの大きさが異なるデータ同士(このブログでは「銘柄」)を「数値」(絶対値)から「比率」(相対値)に変換し、比較する作業を行う。

07_640x284※参考【相関分析と相関係数

上の図は、異なる変量xyのデータを均一化して比較するために、違う大きさ、違う形のデータを、同じ形に加工し直したイメージである。

上記2つの図を見てわかるとおり、データを加工する過程において、データの持つ本来の個性の情報が失われてしまっていることがおわかりいただけるだろうか。たとえば、「象」と「犬」の大きさ、「身長」と「体重」の尺度は全く異なるが、均一化することによって、比較することが可能となる。

このように、「相関係数」は「尺度の異なるデータ同士を比較できる」というメリットがある一方、「本来のデータが持っている個性の情報が失われてしまう」というデメリットがある。

したがって、単純に相関係数が高い銘柄ペアを組み合わせるだけでは、ペアトレードはうまく行かない可能性が高くなるだろう。

そこで、「ボラティリティ」の概念を使って「相関係数」の弱点を補完する必要が生じる(【標準偏差】参照)。
04_640x406_2
※参考【正規分布

上の図は、どちらも「相関係数」の高い銘柄ペアのイメージである。

左の図はβ値、つまり山の大きさ(ボラティリティ)が異なっている銘柄ペア、右の図はβ値が近似している銘柄ペアのイメージである。

どちらも、「相関係数」だけに注目すれば非常に相性の良い銘柄ペアであるが、左の組み合わせで取引をすると、ベータリスクを排除しきれずに青い銘柄の片張り投資をしているのとあまり意味が変わらなくなってしまう。

これでは、「価格差」(α)のみに注目して取引するはずのペアトレードの本質が、マーケットの変動リスク(β)を受けることによって失われてしまうことになる。※参考【ペアトレードの本質

以上により、「相関係数」だけでは本来のデータスケールの判断ができないため、「β値」を相殺させる作業をする必要がある(βニュートラル)。

なお、ここで用いる相関係数は「価格差」の相関、β値は「日足リターン」の相関のことを言う。

実は相関係数の落とし穴はここにある。

一般的にペアトレードで強調されている相関の高さは「価格差」で相関を取ったものだが、「日足リターン」の相関、つまりβ値も同様に高くなければペアトレードは失敗に終わる可能性が高いと考えられる(例として相関係数0.9でβ値が0.5の組み合わせなど。β値が高いという表現は誤解があるかもしれないが、同程度に合わせるという意味)。

むしろ、多くの投資家の方がスクリーニングの際に異常なほどにこだわっている「価格差の相関」は個人的には0.60.7程度あれば十分ではないかと考えている。

ここは以外な盲点なので付け加えておきたい(【相関とサヤ取り】【βと共分散と相関係数の関係】参考)。

私が以前銘柄選択の基準:ステップ3で申し上げた「相関係数よりもβ値のほうが重要」という意味がおわかりいただけただろうか?

多くのブログに目を通してみたが、価格差の相関係数が大事という発言が目立ったので違う観点から書いてみることにした次第である。

マーケットニュートラルの本質は、「ベータ(β)リスクを極力排除してアルファ(α)を取りに行く戦略」であるから、ポートフォリオ全体を市場変動リスクから相殺させるためには、β値を極力ニュートラル(中立的)に調整する必要がある。

なお、ここでいうβとは、「ベンチマークに対するポートフォリオの感応度」、αとは「ベンチマークの動きにかかわらず生じる収益」のことを言う。

β値をニュートラル化する作業は重要なファクターである。補足しておくが、これはあくまでも理論上の話である。実際にペアトレードでβ値を「±5%以内、±10%以内」のように極力ニュートラル化しようとすると、条件に合致する銘柄ペアがかなり限られてしまう。さらにβ値を完全にニュートラル化しようとすると条件に合致する銘柄が無くなってしまう(改善案としては、【ペアトレードの改善点】参照)。
 

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